今は廃刊となったBLUEGRASS REVIVAL誌にHeadway社長のインタビュー記事がありました。Headwayのギター製造に関する姿勢・考え方がよくわかります。(資料提供:福山、後藤さん)
BLUEGRASS REVIVAL1981年4月号(No.43)
ウェイ・オブ・ライフ・・・・納得できるものをつくりたい。
株式会社ヘッドウェイ社長 八塚 恵氏インタビュー
零下12度を知らせるニュースを横目で見ながら長野県の松本駅を出た。吐き出す息は白さが増しているようだが、これは気のせいだろう。ここには「ギターを作っている面白い社長がいるよ」と知人に知らされて、はるばる出張先の大阪から遠征だ。楽器作りは素敵な商売−そう思っているのだが、それも外見からだけ見た場合だろう。会見を申し入れて15分タクシーに乗ったら着いた。アノラックを着て、アポロ・キャップをかぶったイキのいい男子が電話を相手にしきりに口を動かしていたが、彼が社長だった。面白いというよりも、若い方に気を取られたが、何となく話しているうちに乗り始めて、このインタビュー記事となった。
(答) 生意気なことを言うけど、売れるものを作っていないからだ。5年先、10年先を見つめてまじめにコツコツとやらなければいけないのに、ギター業界は明日を考えているとは言いきれないし、そうして来なかったから現在が悪いのだ。だから、もっと厳しくなるかもしれない。
(問) たとえば「今年は5万円以下が売れたな」という業界の発表があれば、ゾロゾロ4万円ぐらいのものが店頭に溢れるほど並んでしまったり…。
(答) 13年前の3万円は決して安くはない。しかし、適当な利益を計上しながら情熱を込めて、いいギターを作ろうとしたなら3万円は適切な価格だろう。現在をそれになぞらえるとしたら、やはり10万円はかかってしまう。ヒョロッと楽器店へ飛び込んでちょっといいギターを、と思ったら10万円以下の中からでは探すことが困難だろう。
(問) あなたが「やはりこれはいい」と思ったギターはありますか。
(答) 私は職人ではないので作れない。しかし、自分の頭の中ではこうすればいいギターが作れるのではないかというイメージがあった。はじめはそれをギター・メーカーに委託していたが思うようなものが出来ず、ついに何から何まで自分でやるようになった。昭和52年6月のスタートで、3年間は採算を度外視ではじめた。あらゆるもので6千万円以上かかった。予定した額の倍の金額だったから、かなり苦しかった。しかし現在は月産200本の製品が毎月完売出来るほどにまで成長したから、多少は楽になっている。近い将来、150本、120本に落として、一本にかける時間を増やして、納得のいくものを作って、世界一になりたい。
(問) いいギターを作るのには、販売面も併せて、いい仕事をしなければなりませんが、素地はあるのですか。
(答) それは大いにありますね。私達メーカーは、口幅ったいけど、かなりいいものを店に届けているつもりだけど、なかなか理想的な反応が返って来ない。エレクトリックが、キー・ボードが、と流行に左右される様子が、見ていると少々残念だ。音楽の現場にいるあなた達ががんばってくれないと。
(問) どんなユーザーに焦点をあてているのですか。
(答) 2本目、3本目を買う人を対象にしている。はっきり言わせていただくと、初心者には買っていただくていい訳なのです。価値がわかる人に弾いて欲しい。初心者を対象にしていると、ヤマハ、東海、モーリスなどの大手と競合するのだから、これは全く私達のポリシー以外のことだ。私達は大手の手の届かない部分で力をつけて生き抜く以外に手がないのだ。その意味でユーザーを絞っている。こういう世界に入ってみてわかることだが、ヤマハというメーカーは絶大なのですよ。そうする以外に方法はないんですよ。(笑)
(問) あなたのポリシーは自然にわかってしまいましたが・・・・・。
(答) わかる人が弾いて納得できる楽器でありたい。将来は小さくてもピリッとした、光っている存在に出来れば理想だ。でも、それは誰にもわからない。跡形もなくなっていることも考えられるからネ、ハハハ。
(問) ギターを作るポイントは?
(答) それは音です。バランスは非常によくても音が小さい。よくあることだがこれはダメで、やはり大きい音でいいバランスを目指さないといけない。それから、ヘッドウェイの場合は、細部への心配りですね。ネックのつなぎ目とか、目に見えないフィニッシュに神経を遣うのが、楽器作りのハートだと思う。それと、これはまぁカッコいいけど、お客さんに永久的に使っていただくために、この一本しかないという気持ちで仕事をしている。
(問) ピックアップ付ギターについては、どんな考えを持っていますか。
(答) はっきり言ってやりません。生ギターでなくなるから。
(問) 最後に何か一言。
(答) ミュージシャンは何故ヤマハのギターだけ持つのか。これには実際頭に来ている。
BLUEGRASS REVIVAL1982年8月号(No.55)
ヘッドウェイから、この秋に新製品三本が発売される。HD−115SPECIAL(15万円)。これは従来の115をグレードアップしたものだそうで、例えば一本ネックのするなど、限定で30本だけの発売だという。
二本目はトリプルオー・タイプのカッタウェイ(15万円)。音楽の多様化に合わせたオール単板のプロフェショナル向き。
そして三本目ラストは、サウンドホールを大きくしたトニー・ライス使用のモデル。以前トーカイからクラレンス・ホワイト・モデルが出されたことがあったが、「それの改良モデルと考えていただきたい」とヘッドウェイでは語っている。「穴をただ大きくすると、どうしても低音が死ぬので、低音を出すためにはブレイシングとか、いろいろな部分の改良を施さなければならないのです」だという。いずれにしても早く見たいものだ。このギターは9月10日、カッタウェイは9月1日、HD−115SPECIALは8月20日にそれぞれ発売される。
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[115SPECIAL/HC-615 AD] |
[CW-117 AD] |
BLUEGRASS REVIVAL1981年4月号(No.43):原稿画像1,2
(その他写真)
(1)ラピタ1996年4月号(小学館)/ニッポンのマーチンは、いまどうしているのか
(2)Hot-Dog Press(講談社)1980年11月号/アコースティック・ギター・ブック
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